看護師の職場環境にも地域差がある

地域の病院も歴史のあるところが多く、代々経営基盤がしっかりしているところも少なくありません。そのため、看護師として勤務すると、非常に信頼され、辞めるまで勤める看護師が多く存在します。

福岡県と長崎県、鹿児島県などの医療事情はかなり異なります。

九州では、福岡県に多くの医療機関がおかれています。福岡市と北九州市だけで、大学病院と企業病院の大半が立地しています。福岡県内には九州大学産業医科大学、福岡大学久留米大学の4つがあるため、医師が県内で入職する傾向が強く、看護師も福岡県内での勤務が非常に多いのが特徴です。また、北九州市産業医科大病院、労災病院、製鉄病院、厚生病院をはじめ、市立病院や国立病院などの数が非常に多く、看護師の求人が多いことも挙げられます。

一方、長崎県鹿児島県といった離島を多く抱える県では、診療所の看護師求人が慢性化していますし、宮崎県や熊本県などの内陸では、病棟勤務と検診業務、老人病棟や一般内科の看護師などが、不足しています。つまり、九州地域ほど、非常に多くの専門的な看護師が必要な地域もないだろう、といわれるほどなのです。

大都市以外では、飯塚市の麻生病院のように、1000以上もの病棟を持つ総合病院があるところは、稀で、ほとんどは介護老人のための長期ステイ施設が、沿岸部に多く建てられています。ですから、看護師の仕事の多くは、臨床よりは病棟管理なのです。

福岡県は全国5位の医師数を誇る、日本有数の医療先進地域です。人口でいえば東京、川崎、横浜だけで1000万人もの人口を抱えるのに対し、福岡市の人口は150万人足らずです。隣接する北九州市の人口を合わせても250万人、これは横浜市の人口よりも少ないほどです。ですが、その医師数と看護師数は非常に多く、良い医師が育つ土壌があります。

そのため、福岡市や北九州市の場合は、緊急医療や産業事故にそなえる薬品事故などの医療チームが常時働いているほか、アジアに接していることから、伝染病や検疫に関わる看護師も必要なのです。つまり、ここではジェネラリスト看護師は内陸部、や離島、スペシャリストは大都市部、と完全に職域が分かれているのも特徴の一つでしょう。一方で、南方系の風土であるため、食生活や気候が関東や東北地方とは全く異なります。

九州全体からみれば、福岡県と長崎県鹿児島県などの医療事情はかなり異なります。ですが、同じ九州地方として考えれば、自分の勤めたい医療環境が選択できること、あるいは病院の規模や急性期、回復期、終末期などの専門病院が豊富にあることから、非常に働きやすい土地柄といえます。そして、生活費も関西や関東よりも少なくて済み、鉄道網が発達している県もあることから、生涯看護師として働き続けるにはよい場所といえるでしょう。